Chemical Sensors

Vol. 8, No. 1 (1992)


Abstracts



化学センサの科学技術に貢献しよう

坂野 久夫

日本特殊陶業(株)専務取締役・中央研究所長

Scienctific Contributions to the Chemical Sensor Technology

Hisao BANNO

NGK Spark Plug Co., Ltd.

 大学を卒業して企業に入ってくる技術系新入社員の希望する仕事は、「研究開発」がダントツで第1位である。これはセラミックス関連企業でも変わりはない。
 セラミック材料の研究開発は、ただ材料のみを考えていただけでは、新しいものは生まれてこない。その材料が使用されると予想される部品、システム中でどのような使われ方をするとか、このこのような使われ方が出来るはずだとかいうことを知らなければならない。材料が本当に生かされるためには、それが製品開発と有機的に結びついて、市場に受け入れられなければならない。セラミックスを利用した化学センサもまた然りである。それには当然のことながら、同じ機能を発揮する他材料・部品との競争、製品の品質と価格(製造技術)など諸外国も含めた他社との競争のハードルを乗り越えなければならない。
 ファインセラミックス国際フォーラム'88名古屋で、当時の米国セラミックス学会のウィリアム・ローズ会長が「日本では研究室の成果がすぐ製品に活かされており、大変すばらしいことだ」と述べているように、わが国は化学センサを含めたセラミックスの分野で、その製品開発と製造技術において、世界のトップクラスの位置を占めるに至ったといえよう。だがしかし、『企業の研究は、セラミックスが出来て、特性が良くて、価格が安く、再現性があり、市場で売れれば問題は解決で「何故そうなったか」を考えようともしない』という批判もある。
 How to ?が日本式研究の主題で、Why ?, Why not ?といった問題の究明をしないのは、そのようにさせないわが国の経営者に責任があるのか、企業のセラミストに責任があるのかは別として、筆者は「特性が良くて、価格が安く、再現性があり、市場で売れるものを開発・製品化すること」の方が「何故そうなったか」を究明することよりむずかしいことであるとつねづね実感している者である。
 世の中で初めての材料・製品開発においては、相当の技術を盛り込まなければ商品化されないし、開発商品の中には相当量のTechnical Informationが付加されているはずである。
 企業の研究開発担当のセラミストは、企業の業績に寄与する仕事をすることは勿論であるが、併せてその科学技術にも貢献するよう努力してもらいたいものである。




イオンセンサ

小田嶋和徳・遠田 浩司・梅澤 喜夫

北海道大学理工学部
〒060 札幌市北区北10条西8丁目

Chemical Sensors 1990/91-Ion Sensors

Kazunori ODASHIMA, Koji TOHDA and Yoshio UMEZAWA

Department of Chemistry, Faculty of Science, Hokkaido University
8-Nishi 10-Kita, Kita-ku, Sapporo 060, Japan

はじめに
 イオンセンサに関する研究の集大成として、種々の固体・液体膜型イオン選択性電極の選択係数のデータ集が最近刊行された[1]。イオンセンサの最近の進歩に関する優れた総説としては、昨年度の本総説にて紹介したいくつかのもの(本誌、6(4), 99-105 (1990)を参照)に続いて、Pungorら[2]、Janata[3]、脇田[4]によるものが代表的なものとして挙げられる。また、大環状化合物のホスト機能に基づくイオン選択性電極の研究をまとめた総説[5]、非水溶液用のイオンセンサに焦点を当てた総説[6]、生体膜類似機能に基づくセンシング化学に関する総説[7]、分子認識界面の観点からの総説[8]も合わせて参照されたい。
 以下、イオンセンサの1990年後半から1991年前半にかけての進歩について、イオンセンサに関する基礎研究、電位応答型イオンセンサ(イオン選択性電極)、光学検出型イオンセンサ、及び化学修飾電極に関する研究動向を概観する。




地球環境のためのガスセンシング

山添  昇

九州大学総合理工学研究科
〒816 春日市春日公園6-1

Gas-sensing for Global Environments

Noboru YAMAZOE

Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University
Kasuga-shi, Fukuoka 816, Japan

There is a growing need for solid state gas sensors to detect air pollutants for protection and control of the global environments. The gas sensors based on solid electrolytes appear to be most suited for detecting oxygenic gases such as NOx, SOx and CO2. Classification and principle of various solid electrolyte gas sensors are first described, followed by the description of recent progresses and achievements of type V a, Vb and Vc sensors for the oxygenic gases.

緒言
 地球環境問題に関連して、種々の産業、工場、自動車等から排出される環境汚染ガスが問題となっている。表1(略)に示すように、燃焼排ガスから放出されるSOx、NOx、HClは、酸性雨の主な原因となっているし、それ自身毒性が強い。化石燃料の大量消費に伴って排出されつづけているCO2は、地球温暖化の主因となっている。また、半導体製造や冷媒として消費されてきたフロンガスによってオゾン層、地球温暖化が進んでいる。さらにH2やNH3などは、悪臭をもっているばかりか有毒であり、居住環境の観点から見過ごせない問題である。表2(略)におもな環境汚染ガスの存在濃度および測定法を示した。種々のガスの測定がほとんど分光分析を中心とする分析機器で行われている。比較的存在濃度の高いCO2、NH3、H2S、HClの測定には、イオン選択性電極が用いられているが、この場合は、ガスを一旦溶液に吸収させたのち分析する方法がとられており、環境汚染ガスを直接測るものではない。分析機器は一般に測定精度は高いが、高価であり、また大型であるため使用が制限される。また、フィードバック制御には必ずしも適していない。小型安価で、信頼性が高く、メンテナンスが容易な全固体型ガスセンサが切望されており、その開発が急がれている。排ガス浄化などに用いられるガスセンサは、とくに化学的安定性や熱的安定性が要求され、セラミックスを用いたセンサが有望である。表3(略)にセラミックスガスセンサにおける検出方式と対象ガスをまとめて示した。対象ガスによって引き起こされるセラミックス材料の電子導電性、イオン導電性および誘電性の変化を利用しており、その検出原理にあったガスセンサの設計が重要である。
 環境汚染ガスのうち、CO2、NOx、SOxなどに代表される含酸素ガスの検知には、固体電解質センサがもっとも優れた特性と広い応用性を備えているように思われる。ここでは、当研究室での研究結果を中心にして、固体電解質ガスセンサによる含酸素ガスのセンシングについて述べる。




第14回化学センサ研究発表会

池田章一郎(名古屋工業大学)
石原 達己(大分大学工学部)

Conference Report. The 14 th Chemical Sensor Symposium

Shoichiro IKEDA (Nagoya Inst. Tech.)
Tatsumi ISHIHARA (Oita Univ.)


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