Chemical Sensors
Vol. 7, No. 3 (1991)
Abstracts
化学センサ研究会への期待
四方 和夫
徳山曹達(株)取締役副事業部長兼樹脂開発部長
Expectation for Japan Association of Chemical Sensors
Kazuo SHIKATA
Tokyama Soda Co., Ltd
今年5月、徳山曹達(株)は、「クラウンエーテル」および合成二分子膜を用いるイオン電極の開発」という題目で、近畿化学工業界から技術賞をいただいた。クラウンエーテルを用いて血中のNa+、K+を高性能に測定するイオンセンサとして、はじめて実用化に成功したことに対するものであった。du Pontの Pedersenがクラウンエーテルの特異な機能を発見したのは30年近くも前のことであり、その功績が認められてノーベル賞を受賞するのもおそかったが、その原理が実用化されるまでにはさらにそれから数年を要した。実用化に時間を要した理由は、基本的には選択性と耐久性のクリアが困難だったことにある。
ある物質のセンシング現象が見出されてから、それがセンサとして実用化されるまでには、多くのバリアーを越える必要がある。
@センシング現象の発見
Aセンシング現象の解明
B性能最適化のための改良
C実用条件下での性能確認
Dデバイス化
E実用条件下での耐久テスト
さらに、一方で重要なのは、世間のニーズとのマッチング、タイミングである。どんなに立派なセンサが完成しても、それを受け入れるところがなければ、それは陽の目をみずに終わってしまうことになりかねない。要は、いかにはやく完成度を上げ、タイミングよく製品を世に出すかであるが、その過程で産学(官)の共同作業はきわめて大きな効果を上げるものと思われる。世の動きはきわめて急で、環境問題の解決は焦眉の急であり、アメニティに対するニーズがこれ程盛り上がりをみせている時代はこれまでにあるまい。さいわい、当研究会はその構成メンバーからしても、共同作業を進める、あるいはそのキッカケをつくる上で、最適の場だと思われる。ますますの発展を期待したい。
ジルコニア酸素センサ
浅田 昭良・中沢 光博
藤倉電線(株)
〒135 東京都江東区木場1-5-1
Chemical Sensors 1989/90-Zirconia Oxygen Sensors
Akiyoshi ASADA, Mitsuhiro NAKAZAWA
Fujikura Ltd.,
1-5-1 Kiba, Koutou-ku, Tokyo 135, Japan
1989-1990年に発表されたジルコニア固体電解質を用いた酸素センサ関連の論文、学会講演の調査を行った。前回の報告(Chemical Sensors, Vol.5, No.4, pp.2-5)に引き続きこの間に発表された主要文献を中心にその内容について紹介する。
可燃性ガスセンサ
玉置 純
九州大学総合理工学研究科
〒816 福岡県春日市春日公園
Chemical Sensors 1990-Combustible Gas Sensors
Jun TAMAKI
Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University
Kasuga-koen Kasuga-shi, Fukuoka 816, Japan
本稿では、1990年に発表された可燃性ガスセンサに関する論文を1) 都市ガス・LPガス、2) 水素、3) 一酸化炭素、4) アルコール、5) 温度サイクル・パターン認識に分類し、それらの概略を紹介する。
最近では、センサ素子自身の性能を改良してある特定ガスに対する感度のみを増大させることを目的とする研究以外にも、複数個のセンサ素子を用いたパターン認識、温度サイクルを付加したときの導電率曲線の解析、ならびに導電率と他の物理量との組合せのような測定方法の改善により、ガス選択性の低い素子を用いてもガス識別や濃度決定を可能にする研究が盛んに行われており、5) で紹介する。
本年始めにChemical Sensor Technology シリーズの第3巻が発行され、SnO2またはZnO単結晶ウィスカーの感ガス特性[1]、多成分混合ガス系の解析[2]、高温プロトン導電体を用いたガスセンサ[3]に関して詳しく解説されているほか、半導体ガスセンサ[4-6]や全固体型水素センサ[7]に関する総説・解説が報告されているので参照されたい。また、多数の半導体ガスセンサ素子を二次元に配列し、可燃性ガスの流れを可視化するシステムについての報告[8]があり、センサの新しい用途として興味深い。
高分子材料を使った耐水性湿度センサ
酒井 義郎
愛媛大学工学部
〒790 松山市文京町3
Water-resistive Humidity Sensor Using Polymers
Yoshiro SAKAI
Faculty of Engineering, Ehime University
3 Bunkyo-cho, Matsuyama 790, Japan
Three different methods are proposed to prepare resistive type humidity sensors which are water-resistive but sensitive to humidity so that one can use them at high humidities or even in dewing. The first one is using graft polymer composed of a hydrophobic trunk polymer film and a hydrophilic branch polymer. The second is crosslinking of hydrophilic polymer films. The third is preparing an interpenetrating polymer networks composed of both crosslinked hydrophilic polymer and hydrophobic polymer. All these sensors were proved to be durable in water for several hours without any change of sensitivity.
はじめに
高分子材料を用いた湿度センサには様々なものがあり、その検出原理に応じて、異なる構造・性質のポリマーが選ばれている。高分子材料を用いる湿度センサを原理によって分類すると表1に示すように、(1)吸湿によって電気的物性が変化することを利用したもの、(2)吸湿による質量増加を利用したものの2種類に大別できる。(1)はさらに電気抵抗変化を測定するタイプと、静電容量変化を測定するタイプとがある。(2)は水晶振動子を用いる方式と、弾性表面波発振器(SAW)を用いる方式があり。以下、高分子材料を用いた湿度センサについて、我々の研究室で得られた結果のうち抵抗形センサを中心にして述べることにする。
地球環境とセンサ
山田 興一
東京大学工学部
〒113 東京都文京区本郷7-3-1
Global Environment and Sensors
Koichi YAMADA
Faculty of Engineering, university of Tokyo
7-3-1 Hongo Bunkyo-ku, Tokyo 113, Japan
Global environmental problems relating to the atmosphere such as climate change, depletion of ozone layer and transboundaryair pollution (acid rain) are explained. In order to solve these problems, it is necessary to understand and clarify the problems and to develop relevant technologies. For this purpose sensors are very important tools. Their needs for global environment are presented here.
はじめに
人間活動の活性化に伴い、地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨、海洋汚染、熱帯雨林破壊、砂漠化など地球規模の環境問題が生じている。これらの問題を解決するには種々の対策が必要であるが、先ず正確な情報を集め、状況を把握し、問題の原因、影響を究明せねばならない。そのためにモニタリングが必要であり、センサが重要な道具となる。本稿では地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨など大気環境に関係する問題の現状とそれらの中での化学センサの役割、ニーズについて述べる。
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