Chemical Sensors

Vol. 7, No. 2 (1991)


Abstracts



先導的研究の発信を

柳田 博明

東京大学工学部教授
(併)先端科学技術研究センター
(併)環境安全センター(長)

Preposals for Novel Research Fields

Hiroaki YANAGIDA

University of Tokyo

 まず、化学センサという概念がわが国から世界へ発信している典型的な例であることを会員諸兄とともに喜びたい。わが国の科学技術研究が、ともすると欧米諸国の意欲的な研究者が学者生命を懸けて提唱する概念の単なる追随あるいは確認のためのものになっていしまっている、すなわち「基礎研究只乗り」になってしまっていることが諸外国から非難されている。ここでよく考えなければならないのは、非難の根本がわが国の研究者が学者生命を懸けないことに対する「卑怯さ」に対してのものであることである。化学センサという概念は、あるいはこの旗印の下に集まっているグループから提唱される諸概念は、学問を先導する意欲と先見性があることを筆者は喜びたいのである。ささやかながら筆者も一翼を担わして頂いていることを誇りに思う。
 筆者は化学センサ研究会の発足に当たり第1回の研究会に講師として招かれる栄誉を受けた。当時、筆者の研究室では、単結晶でもなく、融媒に使えるほどの多孔質体でもない、いわゆる「ちゅうくらい」な状態のセラミックスの電気的性質を調べようとしていた。今考えれば、これは多孔質セラミックスを化学センサにする基礎研究になっていたのである。
 突然脱線するが、筆者の精神的風土の中には信州の影響が大きい。一茶の俳句に「めでたさもちゅうくらいなりおらが春」というのがある。ここでいう「ちゅうくらい」とは決してまん中というニュアンスではない。信州のことばで「ちゅうくらい」とは「いい加減、締まりがない、だらしがない」などどちらかと言うと余りよい意味ではない。正確には「ちゅうくらい」ではなく「ちゅっくらい」が正しい発音である。
 ここでもとに戻る。こんな「ちゅうくらいな」セラミックスがその後のセラミックスセンサの研究開発を進める基礎となった。当時こんな状態の物質を研究対象とする事は、非常につらかったことを思い出す。それでも、センサ研究会に招かれたときは、すでにある程度「ちゅうくらい」な状態を研究する意義が認められるようになっていた。最初に非難されていたとき引っ込んでしまっていたら、その会に呼ばれもしなかったろうし、今日ある程度とは思うがオリジナリティを認めていただけるようにはならなかったであろう。
 1987年5月、東京大学に創立された先端科学技術研究センター(以下、先端研、と略称する)の基幹研究分野に「化学認識機能材料」が設置された。初代の担当教授に筆者は選任された。この分野名称は、まさしく「化学センサ」を意味している。文部省は研究分野として公式に認知したことになる。1989年4月から1991年3月までの2年間、筆者はそこでセンター長を命ぜられた。その間力説してきたのが、学者生命を懸けての新しい概念の提唱の重要性であった。その態度は「ちゅっくらい」なものではなかったと思う。
 あまり既成概念の枠にとらわれず、新しい領域に研究の対象を見いだして頂けるよう会員諸兄にお願いしたい。それは既成概念から見ると「ちゅっくらい」に見えるかもしれない。しかしそれを見出したら今度は「ちゅっくらい」ではない態度で推進していただきたい。学者生命を懸けて、である。それが学問を先導する発信となるのである。




固体電解質ガスセンサ

桑田 茂樹

新居浜工業高等専門学校工業化学科
〒792 愛媛県新居浜市

Chemical Sensors 1989/90-Solid Electrolyte Gas Sensors

Shigeki KUWATA

Department of Industrial Chemistry, Niihama National College of Technology
Niihama, Ehime 792, Japan

 ガスセンサI、IIに引き続き、固体電解質ガスセンサとして、安定化ジルコニアを用いたものを除くO2ガスセンサ、H2ガスセンサ、CO2ガスセンサ、NOxガスセンサについて、1989年から1990年における研究の動向を概観する。




半導体化学センサ

勝部 昭明

埼玉大学工学部
〒338 浦和市下大久保255

Chemical Sensors 1989/90-Semiconductor Chemical Sensors

Teruaki KATSUBE

Faculty of Engineering, Saitama University
255 Shimo-Okubo, Urawa Saitama 338, Japan

 半導体化学センサについて本誌[1]に1989年前半までのものをまとめた。ひき続いて1990年末までの研究状況について述べる。半導体化学センサの定義は広いがここではシリコンを中心とした半導体マイクロエレクトロニクス技術を活用したセンサを扱う。




Korea-Japan Joint Symposium on Chemical Sensors '91

三浦 則雄(九州大学総合理工学研究科)
谷口  功(熊本大学工学部)

Norio MIURA (Kyushu Univ.)
Isao TANIGUCHI (Kumamoto Univ.)



1991 International Conference on Solid State Sensors and Actuators (Transducers '91)

三浦 則雄(九州大学総合理工学研究科)
武内  隆(徳山曹達藤沢研究所)
松口 正信(愛媛大学工学部)
佐藤 生男(神奈川工科大学)
勝部 昭明(埼玉大学工学部)

Norio MIURA (Kyushu Univ.)
Takashi TAKEUCHI (Tokuyama Soda Co., Ltd.)
Masanobu MATSUGUCHI (Ehime Univ.)
Ikuo SATOH (Kanagawa Inst. Tech.)
Teruaki KATSUBE (Saitama Univ)


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