Chemical Sensors
Vol. 5, No. 4 (1989)
Abstracts
化学センサに期待するもの
石丸 公生
大阪ガス(株)研究開発本部副本部長、取締役、開発研究所所長(兼)
スケルトンのガスストーブにマッチで点火していたのを覚えておられる方も多いと思う。今では温風暖房器がこれにとって代わっている。温風暖房器は自動点火や湿度の自動調節機能をもつことはいうまでもなく、炎の立ち消えや不完全燃焼を検知して自動的にガスを遮断できるようにさえなっている。近年急速にエレクトロニクスやセンサの技術が進歩したおかげである。しかし、化学センサに限れば、可燃性ガスセンサや湿度センサがガス漏れ警報器や空調機器に使われている以外、ガス機器の中で広く使われているものは少ない。これは温度や圧力に比べて化学量を検出するニーズが少なかったことにもよるが、センサの使い易さや信頼性が物理センサに比べて劣っていることにも起因しているように思われる。
センサを使用する側からすれば、環境の温度や共存する化学成分に影響されず、目的とする化学量の検出ができることが望ましい。しかし、これらの影響を受けない化学センサは見つかっていない。また、長期間使用していると感度が経時的にドリフトすることも問題である。実用に当たっては使い方を工夫しているのが現状であり、化学センサが広く使われるためにはこうした問題の解決が図られなければならない。幸い、化学センサは日本が世界をリードする状況にあり、ガスセンサをはじめ、ケミカルセンサやバイオセンサの分野でも新しい提案や研究開発が活発である。6月26日からモントリオールで開かれたTransducers'89では、化学センサの分野で100件を越える研究が発表され、世界的にも化学センサに強い関心が集まりつつある。心強いかぎりである。
化学センサへの期待は医療分野をはじめ、空調や燃焼の分野でも急速に高まりつつある。空調機も単なる冷暖房機から快適性を提供する機器へと変わりつつある。温度や湿度に加えて、流速、煙、臭いなどを検出するセンサが必要になるであろう。また、最近では地球の温暖化や酸性雨の問題が取り上げられ、NOxやCO2の排出量削減が、重要な課題となっている。燃焼屋の間では触媒燃焼など新しい燃焼技術への取り組みが行われているが、信頼性の高い燃焼制御技術の開発も重要である。O2, CO, NOxなどの濃度を検出するセンサがいっそう重要になるであろう。
化学センサに対する期待は大きい。より使い易く信頼性のある化学センサが開発されることを願う次第である。
ガスセンサII―ジルコニア酸素センサ―
佐治 啓市・高橋 英昭・竹内 正治
豊田中央研究所
1986〜1988年の間に発表された、ジルコニア固体電解質を用いたセンサ関連の論文をJICSTにより調べた。その結果、ジルコニア酸素センサ関連の文献は、間接的なものを含めて、84件であった。この中の主要文献を中心に、リストと内容を紹介する。なお、内容紹介に、若干の片寄り、見落としがあるかも知れないことを、あらかじめお断りしておく。
ガスセンサIII―固体電解質センサ―
今中 信人・足立 吟也
大阪大学工学部
ガスセンサI, II に引き続き、ガスセンサIII―固体電解質―として、安定化ジルコニアを除く酸素ガスセンサ、さらに、亜硫酸ガスセンサ、イオウセンサ、炭酸ガスセンサを取り上げ、ここ数年の動向を概観する。
半導体化学センサ
勝部 昭明
埼玉大学工学部
半導体化学センサの進展について、1988年の前半まで江刺先生がまとめられている[1]。これに引き続いて1988年後半と1989年前半に発表された研究を紹介する。前回までと同様金属酸化物半導体などを用いた
イオンセンサ
小田嶋和徳・菅原 正雄・片岡 正光・梅澤 喜夫
北海道大学理学部
イオンセンサの1988年〜1989年における進歩について、新しい感応素子の設計を含めて固体膜、液膜型イオン選択性電極(ISE)、化学修飾電極の開発を中心に各々の研究動向を概観する。
To Japanese Contents
To On-line Chemical Sensors Index Page (Japanese)