Chemical Sensors

Vol. 5, No. 1 (1989)


Abstracts



二十一世紀の化学センサのために

山内  繁

国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所障害工学研究部長

 このたび、山添先生から引き継いで化学センサ研究会会長をお引き受けすることになりました。責任の重さに身の引きしまる思いがしております。
 清山先生を中心として、“センサー研究懇談会”が発足してから、12年になります。12年前といえば、センサという言葉にあまりなじみもなく、センサのための学会活動も他ではほとんど存在しない状況でした。この12年間の活動の中で、化学センサの分野において我が国が主動的な立場にあることを何度か確認しました。たとえば、第1回化学センサ国際会議の開催、また、ECSとの合同大会を契機としてECSの中にセンサグループが発足したこと、昨年からChemical Sensor Technologyの刊行を開始したことなどが挙げられます。
 これは、清山先生、鈴木先生をはじめとする諸先生方の功績、各企業におけるセンサの開発と実用化などがあって初めて可能であった事であろうと考えております。
 また、1981年から開始した化学センサ研究発表会も年を重ねるにつれて盛んになり、昨年の秋の第7回研究発表会からは要旨集を大幅に充実し、本年四月の電気化学協会第56回大会からは、センサのシンポジウムを本会の主催とし、第8回化学センサ研究発表会として開催できることになりました。
 このように、本会の発展には目ざましいものがあり、また、毎年化学センサ研究発表会で発表される論文も高度なものが増えてきているものの、何となく物足りない感もないわけではありません。
 “センサー研究懇談会”の発足当初は、可燃性ガス検知器、ジルコニア系酸素センサ、バイオセンサの三つの主要な分野が社会的にも大きい問題とされ、これらを中心に熱心に議論が行われました。このうち、少なくとも前二者については当時解決を迫られていた問題は一段落し、その後問題となった湿度センサ、FETセンサについても一応の区切りがつけられている感じもあり、かつての熱気は多少冷めてきたせいかも知れません。
 しかし、それよりも、我が国の化学センサの開発が次の時代を準備するために模索している段階にあるためではないでしょうか。このような段階においては、情報とアイデアの自由な交換と相互の刺激が必要であり、本会の役割もそれだけ重要になってきていると思います。二十一世紀を抑えるために開発しておかねばならない化学センサは何であるか、そのために本会がどのような活動を行うことが必要であろうか、会員の皆様とともに考えてゆきたいと思っております。




ガスセンサI―可燃性ガスセンサ―

玉置  純

九州大学総合理工学研究科

はじめに
 本稿では、昨年発表された可燃性ガスセンサに関する論文を1)都市ガス・LPガス、2)水素、3)一酸化炭素、4)アルコール、5)その他のガスに分類し、それらの概略を紹介する。1)では都市ガス・LPガス検知に関する論文の他に、ガス検知機構や検知特性に関する論文も紹介する。
 最近では、可燃性ガス以外にも対称となるガス種が増えてきているが、その一部を5)で紹介する。また、昨年は可燃性ガスセンサに関する解説がいくつか報告されているので、それらも参照されたい[1-4]。




SnO2高感度ガスセンサ―においセンサへのアプローチ―

中原  毅(徳山曹達(株))
香田 弘史・島袋 宗春(フィガロ技研(株))

はじめに
 SnO2やZnO等の金属酸化物半導体の電気伝導度変化を利用して、ガス検知を行うことが1962年に提案されて以来[1][2]、半導体ガスセンサに関する多数の研究、開発が進められてきた。これらのうち、SnO2を用いたガスセンサは、1968年の実用化以来家庭用ガス漏れ警報器用など種々の分野で利用されており、長寿命、メンテナンスフリーといった実用性とともに、電気化学式や接触燃焼式等のセンサに比較してガス感度が高いという大きな特徴を有する。
 さて、ここ数年ガスセンサに対するニーズは、爆発事故や中毒事故の防止など従来からの保安・防災的なものに加え、快適性を指向するものへと多様化してきている。この流れに沿って、室内や車内等の雰囲気の汚れをモニターするセンサあるいは人間の嗅覚を代替しにおいをかぎわけるセンサシステム等の研究、開発が続けられている。ここでは、ガスセンサの新しいニーズの中からにおいセンシングの分野に注目し、研究開発の動向について概観するとともに、SnO2ガスセンサの特徴を生かした硫化物系ガス用の高感度センサについて述べたい。さらにその一例として、小型で省電力型のセンサを使用した口臭チェッカーを紹介する。



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