Chemical Sensors

Vol. 3, No. 4 (1987)


Abstracts



ISFETの初めの頃のこと

松尾 正之

東北大学名誉教授・東京電機大学理工学部教授

Although my first publications about the development of ISFETs, dated 1970 and 1972, suggest that this is the beginning of the ISFET "revolution", in reality the research actually started in 1966. In this year my research effort in the field of biomedical measurements, especially those concerning the measurement of local ion concentration variations, could be extended in the direction of silicon electrodes, because at that time Professor Memelink started his MOS research at our University. This was a unique possibility to combine electrode development and MOS technology, leading to the development of ISFETs.
As a pioneer in this field I had to fright against various critical researchers who did not believe that it would ever be possible to use electronic devices in an electrolytic environment.
I remember that Professor Memelink visited the Stanford University in 1971 and after he returned he showed me some notes, about a Japanese professor who was also very active in this field and with convincing results. This turned out to be Professor Tadayuki Matsuo.
This message stimulated me to go on with my own experiments and resulted in less criticism in my surroundings. So, although Professor Matsuo did not published his results before 1974, I am still very indebted to the personal communication between him and the head of my project Professor Memelink, which encouraged me to proceed further along the difficult road of my pioneering work.
Perhaps it is a little late, but nevertheless thank you very much Professor Matsuo.
Also our personal contacts later are greatly appreciated.

 これはオランダのBergveld教授が、昨年私の定年退官にあたり寄せてくれたメッセージである。ISFETに関する研究の当時の状況を物語るものと思い、ここにご紹介する。
 私は1950年〜1965年にかけて、微小電極を用いて神経インパルスを誘導するための負容量前置増幅器の研究を行っていた。すなわち始めは真空管、後にMOSトランジスタを用いて増幅器を試作していたが、これは正帰還を用いるため、なかなか厄介な増幅器であった。また一方では生体誘導電極の研究も手掛けており、分極が関係しない絶縁物電極に興味をもっていた。
 このような時にBergveldの1970年の最初のISFETの論文を知った。驚いたことには、MOSFETのゲート金属電極を除き、ゲートのSiO2絶縁膜を電解液に浸すことで比較電極がなくとも、液中の特定イオン濃度が測定できる、という甚だ不思議なものであった。私は、これはゲートをフロートさせているからMOSFETの動作が怪しい、多分彼の実験は間違いであろうと思った。しかし当時上述のような研究をしていたので、直ちに次のような考えをもった。すなわち別に液中に比較電極を用いれば、絶縁物電極と前置増幅器を集積化した能動電極となる筈で、これをプローブ状に製作すれば厄介な負容量増幅器は不要になると考えた。この予想は見事に的中し、予備的実験は成功した。この結果を1971年10月の電気関係学会東北支部大会に“半導体の電解効果を用いた医用能動電極”として発表したが、これが我々のISFETの最初の発表である。
 この年の9月から翌年6月までStanford大に文部省在外研究員として滞在することになった。この間にWise講師(現ミシガン大教授)の協力を得てこのタイプの能動電極(MOSFETとの対応からLOSFETと名付けた)を試作する幸運に恵まれた。我々のデバイスのBergveldのものと異なる点は、液中で殆ど水和しない安定なSi3N4膜を用い、かつ比較電極を用いたことである。
 Stanfordでは専ら能動電極として実験していたが、生理食塩水中でゆっくりした特性のドリフトが観測された。原因が分からず不思議に思っていたが、後にこれが生理食塩水中へのCO2ガスの溶解によるpH値の変化であることを知り、以後能動電極としてよりはイオンセンサのISFETとして研究するようになった。私にとってはISFETは能動電極の副産物であった。と同時に、いささか怪しげな実験にもかかわらずISFETの本質を見抜いたBergveldの洞察力には敬服する。私がStanford大に滞在したことが、Bergveldの研究を鼓舞したことになっていたとは、彼からのメッセージで初めて知った次第である。また共に同じようにバイオメディカルの装置の研究からスタートしたことは偶然の一致であった。
 近年ISFETの研究が盛んに行われるようになったが、私にとっては誠に感慨深いものがある。この分野の一層の発展を切に祈念したい。




半導体化学センサ

江刺 正喜

東北大学工学部

はじめに
 半導体化学センサの研究が活発に続けられている。これまでその進展について2回報告してきた[1][2]。最近のこの関係の国際会議には、1986年7月フランスのボルドーで開催された第2回化学センサ国際会議や、1987年6月東京で行われた第4回固体センサ国際会議(Transducer '87)などがある。前者については前回の報告[2](1985年中期から1986年中期分)の中で主なものを紹介しており、本報ではそれ以降の1986年中期から1987年中期にかけての主だった半導体化学センサの研究を紹介する。
 半導体を用いた化学センサには金属酸化物による半導体の化学センサなどもあるが、これについてはガスセンサの項を参照願い、ここでは半導体の電界効果を用いたものや半導体微細加工技術を用いてシリコン基板上に作られたものなどに関し、2では気体用センサ、3では液体用についてそれぞれ述べる。




第6回化学センサ研究発表会

(1987年12月10-11日 於 東京大学山上会館)

清水 康博(長崎大学工学部)

碇山 義人(国立リハビリテーションセンター研究所)


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