Chemical Sensors
Vol. 3, No. 3 (1987)
Abstracts
ガスセンサの明日へ向かって
小松 宏二
新コスモス電機(株)コスモス研究所所長
昭和44年に半導体式ガスセンサを用いたLPG用ガス漏れ警報器が初めて発売され、すでに18年を経過しました。また、昭和55年には都市ガス用も登場し、現在では約1800万台の家庭用ガス漏れ警報器が普及しています。最近の統計調査によりますと、この普及率とガス事故の減少率の間には、明らかな相関関係があり、警報器の設置による防災効果は顕著に現れています。一方、この間にガスセンサは感度、選択性、安定性などの性能面でも、多くの改良がなされ、警報器の保証期間も延長されましたが、まだ改良すべき点が多く残されています。
ご承知のように、ガスセンサは今後ますますsmall, sensitive, selective, stableの方向に分極化し、また集約化され、それぞれの特性を生かした分野に活用されていくものと思われます。その第1は、センサの小型化と小電力化であります。これは単に機器の軽薄短小化や電池駆動の携帯用ばかりでなく、家庭用ガス漏れ警報器のコードレス化につながるものであります。また、最近のIC技術を応用した高度集積化や多機能化した小型ガスセンサの出現も待たれるところであります。第2は高度感化であります。ガス爆発防止を目的とした前記警報器では、警報を発するガス濃度はLELの1/4以下と規定され、通常は数1000ppmに設定されていて、感度的には問題はありません。しかし、作業環境における毒性ガスの検知や、室内雰囲気の汚れや臭気の検知、さらに進んで香りなどの制御を考えますと、数ppm〜ppbの検知が要求されます。第3は選択性であります。初期に発売された家庭用ガス漏れ警報器は、お酒の燗や調理時に誤報を発するというトラブルのあったことはご承知のとおりでありますが、その後、センサの改良が重ねられ、また使用法も工夫された結果、現在では誤報を発することはなくなりました。しかし、化学工場などのガス検知や、作業環境における毒性ガスの検知など、他種類のガスが共存する場合に、特定の微量ガスのみを検知するには、現状の選択性では不十分なことが多く、より高度な選択性が望まれます。ガスクロマトグラフのような分離カラムを備えずに、どこまで選択性を向上できるか、非常に難しい問題ですが、新分野開拓のためには解決しなければならない課題であります。第4は安定性、特に長期安定性であります。半導体式センサを用いた家庭用ガス漏れ警報器では、幸い高感度化の方向に老化が進みます。言い換えると、初めに設定した警報濃度より低い濃度で警報を発するようになり、安全サイドに変化します。これに反して、接触燃焼式センサでは触媒が劣化し、警報を発する濃度が高くなっていく欠点があります。しかし、半導体式センサは湿度に対する安定性が悪く、長期的に見ると季節変動となって現れます。従って、高精度にガスを検知するときは、湿度補正をする必要があります。以上、現在用いられている半導体式ガスセンサについて、主として実用面から4Sの問題点を指摘してきましたが、まだ数多くの改良すべき点が残っています。
私達、ガスセンサを取り扱う者にとって、最終目標は、やはり生物の優れた嗅覚を再現することでありましょう。しかし、今すぐそこまで望めなくとも、前述した4Sの個々について、さらに数段のレベルアップを図ることによって、従来のガス漏れ検知のみでなく、化学工業におけるプロセスコントロールや、環境アメニティへの対応など、数多くの新しい分野への展開が可能なるものと期待されます。
バイオセンサ U
軽部 征夫
東京工業大学資源化学研究所
ガスセンサ V -硫化水素、亜硫酸ガスセンサ-
今中 信人・足立 吟也
大阪大学工学部
ガスセンサT、Uに引き続き、今回は硫化水素、亜硫酸ガスセンサを取り上げ、1985年から1987年の動向を概観する。
日米合同電気化学大会化学センサシンポジウム
(1987年10月19日〜22日 於 ホノルル市、ヒルトン・ハワイアン・ビレッジ)
三浦 則雄・清水 康博・碇山 義人
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