Chemical Sensors
Vol. 3, No. 2 (1987)
Abstracts
シリコン超 LSI とバイオセンサ
綾木 和雄
日本電気株式会社
シリコンLSIはこの10周年にめざましい発展をとげた。精力的な技術開発により、驚異的な高集積化、高性能化を達成した。半導体メモリを例にとると、ほぼ3年で4倍、10年で100倍の高集積化を実現した。現在は1メガビットメモリの量産が始まっており、4メガビットメモリも開発されている。プロセッサについても、ほぼ同じ割合で高集積化が進められ、100万個に近い数の素子を集積化したプロセッサが開発されている。10数年前の大型コンピュータの機能が、数ミリ角のチップ上で実現されている。
シリコンLSIは事業としても大きな成功をおさめた。その結果、多額の開発費を投入することが可能となり、それがまた技術開発を加速した。シリコンLSIはコンピュータだけでなく、多くの装置、機器に用いられ、社会に変革をもたらすほどの影響を与えた。
半導体事業は現在、やや低迷しているが、まだ延びていくものと考えている。技術開発は強力に進められており、技術は停滞することなく発展し続けている。集積度はさらに高くなり数千万個の素子が1チップ上に形成され、それにより、高度な機能を持ったシステムが1シリコンチップ上に構成されるものと予測している。
このように、これまで急速に進展し、さらに発展を続けるシリコンLSIも、20世紀の終わり頃には微細化技術の限界に近づき、一つの曲がり角に到達するのではないかと考えられている。
そこで、シリコン超LSI技術と他の分野の技術を融合させることを、いろいろな観点から検討している。これにより、シリコン超LSIをさらに発展、飛躍させることが可能になるかもしれないし、また従来の超LSI技術の延長とは異なる新分野の開拓の可能性もある。
数年前からバイオセンサの研究を行っている。当社で研究しているのはシリコンで作った素子のゲートに相当する部分に酵素膜をつけたものである。この構造により、尿素センサ、グルコースセンサ等を試作した。これらは簡単な構造の初期的なデバイスであるにも拘わらず、それらの持っている尿素或いはグルコースのみを選択的に検出するという機能は、最先端の超LSI技術によっても実現出来ないものである。
今後の研究により高度化をはかると共に、シリコンLSI技術との融合を深めることにより、新分野への発展のいとぐちになるのではないかと期待している。
これからは、異なる分野との間の境界の辺りから新技術が生まれる可能性が高いと考えている。最近の研究動向において、組織を越えて異なる分野の研究者が共同研究を行うことが次第に多くなりつつある。
異なる分野の人が共同で研究を行うのは、実際にはなかなか大変である。いつも経験するのは、まず言葉が違うということである。説明を聞いても、容易に理解できない場合が多い。それは基礎的な知識が不足していることだけではなく、その分野の専門家が共通に身につけている基本的な考え方がよくわかっていないことからであろう。互いに言わんとすることを理解するのにかなりの話し合いを必要とする。やや誇張した言い方をすると、国際的な問題において、相手国と言葉が違い、文化が違い、考え方が違うために、相互に理解し合うのに苦労するのに似ている。
このように、分野を越えた共同研究は苦労の多いものであるが、その意義は大きい。自分の専門領域の知識、考え方ではどうしても従来からの枠にとらわれがちになる。他の分野の考え方、知識を知ることにより、新しい発想が得られやすい。
化学センサ或いはバイオセンサの研究を通してエレクトロニクス以外のいろいろな分野の方々と知り合い、交流を深め、それぞれの技術の発展、さらには新分野の開拓を行いたいものと考えている。
湿度センサ
荒井 弘通(九州大学総合理工学研究科)
清水 康博(長崎大学工学部)
はじめに
これまでに種々の材料を用いた湿度センサが企業や大学の研究所で開発されてきた[1]。しかし、湿度センサに関するはっきりした工業規格がなく、センサの特性を評価する上で問題点となっていた。そこで、現在のところ材料技術研究協会内に湿度センサ委員会が設置され、評価法の検討が進められている[2]。このような現状は、湿度センサの研究開発がもう既に揺らん期を過ぎ、化学センサの一分野として確固たる地位を確立したことを示している。
1986年7月ボルドーにて第2回化学センサ国際会議が、また1987年6月東京にてTransducers '87国際会議がそれぞれ開催され、多数の湿度センサについての研究発表が行われた。さらに、昨年度も湿度センサについての論文が多く発表されている。第2回化学センサ国際会議の発表内容については既に本誌の学会レポート[3]で報告されているので、本稿ではそれ以後の湿度センサの研究開発動向についてまとめる。
イオンセンサ
梅澤 喜夫・菅原 正雄・片岡 正光
北海道大学理学部
イオンセンサの1986年および1987年の一部について、この間のイオン選択性電極、おれにいわゆる化学修飾電極などの項目について、各々の研究動向を概観する。
Transducers '87
(1987年6月2〜5日 於 東京高輪プリンスホテル)
山添 昇・清水 康博・三浦 則雄・碇山 義人
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