Chemical Sensors
Vol. 3, No. 1 (1987)
Abstracts
化学センサ研究会の発展を願って
山添 昇
九州大学教授
この度、塩川前会長の後をうけて化学センサ研究会の会長を拝命することになりました。ユニークな活動によって大きな貢献をなして来た当研究会がこれからも順調に発展していけるよう微力を尽くす覚悟でおります。さいわい今年度からは、新たにお二人の副会長ご就任を得て、4名の錚々たる副会長を擁する研究会になり、組織が一層充実いたしました。重量級の歴代会長にくらべて、いかにも頼りない会長ですが、副会長、役員はじめ会員諸兄の温かいご支援、ご協力を心からお願い申し上げます。
よく日本人は真の独創性に欠けると言われます。外国で生み出された種が日本に持ちこまれて、実用化や高度化につながった例が少なくありません。しかし、こと化学センサに限って言えば、日本生まれのものが多く、この例にはいらないことを誇りに思います。情報化社会の到来によって、化学センサの重要性は益々増大する一方ですし、これからも日本がこの領域で世界をリードしていけるようにしたいものです。当研究会の事業の一つとしてChemical Sensor Technologyというシリーズ本が来年初頭より出版されますが、日本からの寄稿が多くあり続けて欲しいと希っています。
化学センサ研究について思っていることを二つ述べます。一つは、産学協同をもっと緊密にしてもらいたいことです。大学での研究はえてしてひとりよがりに陥り易く、一方企業での研究は、先を急ぐあまり基礎が欠落しがちです。真によいセンサを得るには、材料科学はもとより多方面からの複眼的な検討が必要で、そのためには産と学とがそれぞれの長所を出しあい協力することが是非とも必要であると考えられます。現在協力関係は、一部ではみられますがまだ充分ではありません。本来、このような協同作業を促すのが当研究会設立の趣旨の一つですし、研究会として何か有効な手だてを考える必要があると思われます。二つは、新しい化学センサ分野の開拓です。これにはたとえば、化学計測用センサの研究が挙げられます。これまで化学センサは、防災、環境保全用のものが多く、プロセス制御用としてはバイオセンサなどの一部を除いてはまだ多くは使われていません。種々の生産工程の無人化、効率化などには、信頼性の高い化学計測用センサの開発が是非必要で、そういう動きがすでに始まっているようです。化学センサの新しい応用分野の開拓のための研究をもっと積極的に行うべきではないかと思われます。
バイオセンサ I
相澤 益男
東京工業大学工学部生物工学科
はじめに
1986年は化学センサあるいはバイオセンサに関する国際会議が数多く開かれた年でもあった。想い出すままに記しても、Electrochemical Society Symposium on Electrochemical Sensors (Boston), Royal Society Symposium on Biosensors (London), US-Japan Joint Seminar on Bioelectrochemical Sensors (Hawaii), 2nd International Meeting on Chemical Sensors (Bordeaux)などを挙げることができる。この他数多くの国内外の会議が開かれたことは事実であり、研究状況が非常に活発化していることを端的に示している。これらの会議については本誌の学会レポートにも報告されているので、ここでは論文誌に現れた研究状況を紹介したい。
ガスセンサ I
-可燃性ガスセンサ-
清水 康博・寺岡 靖剛
長崎大学工学部
はじめに
本稿では、昨年発表された可燃性ガスセンサに関する論文を1)都市ガス・LPガス、2)水素、3)一酸化炭素、4)アルコール、5)その他のガス、6)多機能センサ・インテリジェントセンサに分類し、概略を紹介する。昨年7月のBordeauxでの第2回化学センサ国際会議については若干紹介するが、大部分は解説記事[1]を参照されたい。
可燃性ガスセンサの研究開発動向としては、一昨年に引き続き多機能センサ・インテリジェントセンサについての研究が多くなった点が目立った。また、固体表面での被検ガスと酸素との触媒反応に注目し、接触燃焼式ガスセンサと半導体センサについて検出特性に及ぼす因子を比較、解説したGentryら[2]の総説は興味深い。
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