Chemical Sensors
Vol. 2, No. 4 (1986)
Abstracts
計測技術におけるHOLON
岡 正太郎
島津製作所常務取締役技術研究本部長
HOLONIC MANAGEMENTということが、企業における革新的な総合経営に不可欠な概念であるとして最近注目を集めている。
企業内で個別的な機能の改善を積み上げるだけでは全体的な経営レベルの向上は期待できないのであって、これは企業が達成しようとする目標をしっかり見すえながら、「全体」と「個」、あるいは「個」と「個」との間に調和のとれた有効な有機的関係を構築し運営していこうという新しい経営手法であるとされている。
「全体子」と訳されているHOLONという言葉は、ギリシャ語のHOLOS(全体)とON(個)との合成語で、英語の形容詞にしてHOLONICとなったらしい。
全体と個の調和という考え方は、何も企業経営の問題に限ったことではない。人を主体とする組織の運営、たとえば学会、協会、組合、会社、委員会、自治会など、人が集まって何かをやろうとするときには十分注意せねばならぬのが、このHOLONICな考え方であると思う。個と全体の調和がない組織には必ず欠陥が含まれていて、そこからは得べかりし成功は期待できない。組織において、特定の個人が抜群に優秀であることは当然大切なことなのであるが、それが全体との調和を欠くということになると好ましい事ではなくなってしまうのである。
さらに、全体と個の調和という考え方は、何も企業経営や人を主体とする組織の運営の問題に限ったことではない。私は35年に亘って分析機器に関係する技術的な仕事をさせてもらってきた。その間の激しい技術の進歩と変遷の経緯を顧みて、ここにもHOLONICな概念の重要さを見出すのである。
計測技術における計測システム(HOLOS)と要素機器(ON)との関係にも全体と個の調和という考え方が当てはまるし、また分析機器(HOLOS)と化学センサー(ON)との間もHOLONICな概念で結ばれていることに間違いはない。
分析化学の最近の進歩が、学問的な理論と技術的な方法論との両輪的相互関係に支えられてきたこと、また分析機器が化学センサーを中心とする多くの要素技術に支援されて高度化されてきたことなどを考えると、まさに計測技術や機器分析法もHOLONICでなくてはならないと思う。
少し乱暴な造語を許してもらえるなら、私はHOLONIC MEASUREMENTという言葉を提案したい。
極端に進歩したエレクトロニクス(とくにコンピューターに関する技術)に比較して、センサー開発の必要性が強調されている今日、本誌の果たすべき役割は重要である。私は、本誌「化学センサーニュース」が単に新しい高性能の化学センサーだけに傾注するのではなく、“HOLONIC MEASUREMENT”ということを理解し、これに役立つ機関誌として発展することを希うものである。
ガスセンサ U
-酸素センサと固体電解質センサ-
水崎 純一郎
横浜国立大学環境科学研究センター
酸素ガスセンサと固体電解質ガスセンサの1985〜86年前半に於ける研究動向をChemical Abstractに掲載された学術論文の中から探ってみた。主要文献のリストと主な内容とを紹介する。
なお、執筆者の不慣れの為、本稿執筆にあたって入手できた論文誌等の範囲が限定されてしまった。内容紹介に若干の片寄りが生じているかも知れないことを予めお断りし、お詫びしておく。次の機会にはより明確な動向を把握してお伝えできるよう努力する所存である。
半導体化学センサ
江刺 正喜
東北大学工学部電子工学科
はじめに
半導体化学センサの研究の進展について、以前報告した[1]。今回はそれ以降(1985年中期から1986年中期にかけて)の分について述べる。なお国内の研究成果に関する記事[2]も参考とされたい。
前回と同様に、ここではシリコンのような単結晶の半導体基板上に集積回路技術を利用して製作されるような化学センサを対象とする。したがってセラミックを用いた半導体ガスセンサなどは本書のガスセンサの項を参照願いたい。しかしこの種の半導体ガスセンサなどでも、最近は薄膜技術などの集積回路技術を利用した注目すべきセンサが多数研究されており、これについては2で簡単に触れることにする。
半導体の電解効果を用いた化学センサを中心に本報では述べるが、その分類については前報[1]で説明した。この原理によるセンサのうち気体用のセンサについては3で、液体用については4でそれぞれ述べていくことにする。
ガスセンサ V
今中 信人
大阪大学工学部
ガスセンサT、Uに引き続き、今回はアンモニア、フロン(フレオン)ガスを取り上げ、1984年から1986年の動向について概観する。
第5回化学センサ研究発表会
(1986年9月11〜12日 於 早稲田大学理工学部)
碇山 義人
国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所
To Japanese Contents
To On-line Chemical Sensors Index Page (Japanese)